退職代行でも自衛隊は辞められない?利用が難しい理由やサービスで退職する流れ
最終更新日 2024年7月9日
「自衛隊は退職代行を使っても辞められない?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか?
結論から言うと、自衛隊の方でも退職代行を利用することは可能です。一方、退職ルールが民間企業と異なるため、退職が比較的難しいと言われています。
今回は、自衛官にとって退職代行の利用が難しい理由やサービスを利用する流れについてご紹介します。本記事を読めば、自衛隊が退職代行で辞める方法を知り、リスクを抑えてサービスを利用できるでしょう。
また後半では、自衛隊が退職代行を利用する際の費用相場やよくある質問と回答についてもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
退職代行の利用が自衛隊にとって難しい理由
自衛隊の退職代行が難しい理由についてご紹介します。
- 退職の自由が制限されている
- 退職時に交渉が必要なケースがある
ここからは、上記2つについて詳しく解説します。
退職の自由が制限されている
基本的に、自衛隊員は上官の同意を得ず一方的に退職することはできません。
一般的な会社員の場合、民法627条によると雇用期間の定めがない限り、労働者はいつでも解約の申し入れを行えます。また、解約の申し入れから2週間が経過すれば、使用者(会社)との雇用契約は終了すると定められています。
一般の労働者は退職の自由が民法によって保障されているため、基本的にいつでも退職できるのです。
一方、公務員である自衛隊と国との間には、契約関係が存在しないため労働契約法や労働組合法が適用されません。代わりに、自衛隊の労働条件は、人事院規則や国家公務員法、自衛隊法などによって規定されています。
人事院規則の「職員の任免」と国家公務員法61条によれば、公務員の退職は任命権者が業務において特に支障がないと判断した場合に承認すると定められています。
参考:人事院規則八―一二(職員の任免) | e-Gov法令検索、国家公務員法 | e-Gov法令検索
任命権者とは、職員の採用や人事異動、退職の承認をする権利のある上官を指します。自衛隊員の辞職は、上官から承認を得る必要があることから、退職するタイミングを自由に決められないのです。
退職時に交渉が必要なケースがある
自衛隊員が退職するには、任命権者(上官)から辞職の承認を得るために交渉が必要なケースが多いです。自衛隊法第40条により、自衛隊における任命権者は「職員の退職を承認すると任務の遂行に著しい支障をきたす」場合、任務完了まで退職を承認しないことが認められています。
一方、退職代行サービスは、主に一般企業・労働組合・弁護士に分けられ、3種類のサービスのうち、一般企業や労働組合が運営するサービスは依頼者の代わりに上官と交渉できません。
※弁護士法第72条により、弁護士資格を保有しない者(一般企業の業者)が報酬を得ることを目的とし、退職手続きなどの法律事務を行うことは禁じられています。また、自衛隊は労働組合へ加入できないため、労働組合運営の退職代行業者に依頼しても交渉できません。
上記の内容をまとめると、以下のようになります。
- 自衛官が退職するには任命権者の上官と交渉するケースが多い
- 上官と退職の交渉ができる業者が少ない。
退職時に上官との交渉を必要とするケースが多い上に、上官と交渉を代行できるのは弁護士に限られるため、自衛隊の退職代行は難しいと言われているのです。
ただ、一般企業運営の退職代行サービスでも、自衛隊員と職場間において連絡・通知の業務に徹すれば、依頼者が「間接的」に退職の交渉を行えます。弁護士監修や実績・ノウハウがあるサービスであれば、民間の業者でも法律に違反するリスクを抑えて退職代行を進められるでしょう。
退職代行で自衛隊を辞めるのがおすすめな人の特徴とは?
退職代行で自衛隊を辞めるのがおすすめな人の特徴についてご紹介します。
- 退職手続きをする時間を確保できない
- 上官や同僚からパワハラやセクハラを受けている
- 怖くて退職の申し入れができない
- 心身ともに限界を迎え自殺を考えている
ここからは、上記4つについて具体的に解説します。
退職手続きをする時間を確保できない
退職代行の利用がおすすめな自衛隊員の特徴として、退職手続きの時間を確保できない場合があげられます。
勤務地や役職によって異なりますが、1日の大半を訓練に費やしたり、大規模な自然災害が発生すると被災地へ出向き救護活動を行ったりと、自衛隊の働き方はハードと言われています。体力的にも精神的にも疲弊した状態で、退職手続きを進めるのは大変と感じる方もいるはずです。
退職代行に依頼すれば、多忙で疲れ切った状態でもストレスを感じることなくスムーズに辞められるでしょう。そのため、退職手続きをする時間や余裕がない方は退職代行サービスの利用がおすすめです。
上官や同僚からパワハラ・セクハラを受けている
自衛隊の内部で、上官や同僚からパワハラ・セクハラを受けている方は、退職代行サービスの利用がおすすめです。退職代行を依頼することで、上官や同じ自衛隊員と顔を合わせることなく辞められるため、心理的負担が軽減されます。
パワハラやセクハラの具体例は、以下の通りです。
- 殴る・蹴るなどの暴力を受けている
- 些細なミスでも度を超えて叱責される
- 人間関係から切り離され同僚に話しかけても無視される
- 男性の自衛隊員から性暴力を受けている
退職代行を使えば、パワハラやセクハラをしてくる自衛隊員と対面するリスクを避けられる可能性があります。自分で直接辞める意思を表明するよりも、心理的負担を抑えて退職できるのです。
怖くて退職の申し入れができない
上官が怖くて退職の申し入れができない自衛隊の方は、退職代行サービスの利用がおすすめです。退職代行を利用すれば、本人の代わりに退職の意思を伝えてくれます。
なかなか自分で退職を告げられない方が抱える不安として、以下の例があげられます。
- 上官から怒鳴られる可能性があり怖い
- 退職を申し出たことで嫌がらせをされるかもしれない
- 強く引き止められて結局辞められないかもしれない
自分で退職を告げる場合、上官によっては上下関係や自衛隊の規則を利用して、退職を拒否したりうやむやにされたりするかもしれません。
退職代行サービスを利用すれば、業者が上官に退職意思を伝えてくれるため、理不尽な理由で怒鳴られることや、嫌がらせ・執拗な引き止めに遭うことがなく、スムーズに辞められる可能性があるでしょう。
退職代行を自衛隊が利用する一般的な流れ
自衛隊が退職代行を利用する一般的な流れについてご紹介します。
- 退職代行サービスに相談する
- 業者と打ち合わせをする
- サービスの料金を支払う
- 業者が自衛隊員の上官に連絡する
- 辞令交付などの必要手続きを進める
- 退職完了・アフターケア
ここからは、上記6つの流れについて詳しく解説します。
①退職代行サービスに相談する
まずは退職代行サービスに相談してみましょう。相談方法として、以下の例があげられます。
- 電話
- メール
- LINE
退職代行は、無料で相談を行っているサービスが多いです。無料相談時には、自分が自衛官であることを伝え、具体的な料金やサービス内容について確認しておきましょう。
③業者と打ち合わせをする
依頼する退職代行サービスが決定すれば、業者と打ち合わせを行います。
- 希望の退職日
- 退職を伝える上官の連絡先
- 有給休暇の残り日数
- 上官からの連絡を拒否するか
- 貸与品の有無
退職代行の依頼前に、事前に上記の点についてまとめておけば、よりスムーズに退職が進むでしょう。
③サービスの料金を支払う
打ち合わせに問題がなければ、退職代行サービスの料金を支払います。
サービスの支払い方法は、銀行振込やクレジットカードが一般的です。
退職代行業者によっては、QRコード決済やPaidyなどの電子マネー、サービス独自の後払いに対応している場合もあります。
今すぐにまとまった現金を用意できない方は、クレジットカードや電子マネーなどを利用して後払いを検討してみてください。
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④退職代行を実行する
入金の確認が取れたら、打ち合わせの内容をもとに退職代行を実行します。
外出中に退職代行を利用すれば、そのまま駐屯地や基地に戻らずに辞められる場合が多いです。また、駐屯地内や基地内で退職代行を利用する場合、退職の引き止めや交渉を行わないように、業者が上官にお願いしてくれます。
⑤退職完了・アフターケア
退職代行サービスによっては、転職サポートを行っている業者もいます。転職サポートの具体的な内容として、以下の例があげられます。
- 履歴書や職務経歴書の添削
- 新しい就職先候補の検索
- 面接の日程調整の代行
- お祝い金(転職成功により5万円キャッシュバックなど)
自衛隊は業務内容が一般的な民間企業と異なるため、就職が難しいと感じる方もいるはずです。転職活動が不安な方は、退職代行サービスのサポートを受けることをおすすめします。
退職代行を自衛隊が利用する場合の費用相場
退職代行の費用相場は、サービスの運営元によって異なります。一般企業・労働組合・弁護士の各運営元ごとの一般的な費用相場は、以下の通りです。
運営元 | 料金相場 |
一般企業 | 2~5万円 |
労働組合 | 2.5~6万円 |
弁護士 | 5~25万円 |
自衛隊の方が退職代行を利用する場合、弁護士へ依頼することが一般的です。弁護士に依頼すると費用が高いケースが多いですが、依頼者の代理人として上官に直接交渉できます。
一方で一般企業が運営する退職代行の場合、上官と交渉をするには、サービスの代理人を通して間接的に行う必要がありますが、弁護士と比較すると退職代行の料金は安い傾向にあります。
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退職代行×自衛隊によくある質問と回答Q&A
自衛隊の方が退職代行を利用する際のよくある質問と回答についてご紹介します。
退職代行を使えば1週間で辞められる?
退職代行を使って1週間で辞められる保障はありませんが、上官から退職の承認を得られた時点で退職できます。スムーズに退職を承認してもらうためにも、自衛官の方は可能な限り任務期間外などの退職が認められやすいタイミングで依頼しましょう。
有事の際(戦争など)でも辞められる?
退職代行の利用に関わらず、戦争や大規模な自然災害といった有事の際は、任務が終了するまで退職が認められない可能性が高いです。
ただし、自衛隊法施行令第54条によると、自衛官が退職しなければ扶養すべき親族を扶養できないと証明された場合、退職が承認されます。
懲戒処分待ちでも辞められる?
一般的に懲戒処分待ちの自衛隊員は、処分が決定されるまで辞めることはできません。処分が決定される前に退職されると、懲戒処分を下せないからです。そのため、懲戒処分待ちの方は決定されてから退職代行を依頼しましょう。
外出中に退職代行で辞めると脱柵になる?
一般的に、外出中に退職代行を利用した場合、上官に外出許可の延長をお願いします。外出許可の延長が認められれば、脱柵になることはありません。
※一般的に脱柵とは自衛隊が脱走すること。
退職の関係書類は直接提出する?
自衛官の退職における関係書類は、直接提出する必要はありません。退職代行を利用した場合、必要書類は郵送で提出します。
迷彩服や制服は直接返却しなければならない?
迷彩服や制服などの貸与品は、郵送して返却します。
辞令交付式に出席する必要はある?
辞令交付式に出席する必要はありません。退職代行を利用した場合、辞令交付の受け取りは郵送です。
有給休暇は申請できる?
自衛官が退職代行を利用した場合でも、申請書を送付することで有給休暇を消化できます。
退職代行を利用すれば自衛隊を辞められる!
今回は、自衛官における退職代行の利用や、サービスを使って自衛隊を辞めるのがおすすめな人の特徴、利用の流れや費用相場についてご紹介しました。
自衛隊を辞めるには、上官から退職の承認を得るために交渉が必要なことから、一般企業が運営するサービスでは自衛官の退職代行が難しいケースが多いです。
ただ、一般企業運営のサービスでも、弁護士監修や実績のある業者であれば、法律に抵触することなく自衛隊の退職代行を進められる可能性が高いでしょう。
退職代行を利用して自衛隊を辞めたい方は、ぜひEXITにご相談ください。